放浪うどん人

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尾道にて - 「東京物語」の足跡を辿って。 -


千光寺から猫の細道を通り、私は尾道水道へ出ました。

太陽に照らされ、海が輝いています。

心も輝いてきます。

良い風景は、どんな偉人の言葉よりも、私に感動を与えてくれます。

尾道が、映画やドラマのロケ地として使われるのが良く理解出来ます。

その風景だけで、人を感動させることが出来る場所だからです。

私は、先日観賞した小津安二郎監督の作品「東京物語」のロケ地を訪ねてみる事にしました。

↓↓中央桟橋

↓↓住吉神社

東京物語」は今から63年前の作品です。

尾道で暮らしている老夫妻が、東京で生活をしている長男や長女、

そして亡くなった次男の嫁に会うため上京。

その東京で滞在した日々を、「家族」をテーマにして、やさしく、せつなく描いています。

素晴らしい作品なので、読者の皆様、是非、観賞して下さい。

↓↓栗吉材木店

訪ねたロケ地は63年前とは状況が変わっていたりして、

作品と同じアングルで撮影する事が殆ど出来ませんでした。

もしかすると、ロケ地と勘違いして撮影している場所があるかもしれませんのでご了承下さい。m(__)m

↓↓竹村家

こちらの竹村家は割烹旅館で「東京物語」のロケ場所としても有名です。

私はロケされた場所を眺めながら、映画のシーンを思い浮かべていました。

私の映画好きは小学校6年生から始まります。

当時はブルース・リーの「燃えよドラゴン」が人気な頃で、それをきっかけに、

私は映画の世界へどっぷりと入り込んでしまいました。

ジャンルを問わず、もう数え切れないほどの作品を観賞しています。

そしていつも思うことがあります・・・、良い映画は何年経っても記憶に残るものだと・・・。

東京物語」は、そういう記憶に残る作品のひとつなのです。

↓↓浄土寺

東京物語」で尾道ロケの中心となった場所、浄土寺へやって来ました。

↓↓こちらは浄土寺へ上がる階段から撮影した風景です。

実は↑↑この風景、大林宣彦監督作品「転校生」のラストシーンでも使われています。

浄土寺境内に入りますと、(「東京物語」が)撮影された頃の面影が所々残っていました。

ただ、一部の建物や燈篭が移設された事もあり、当時と全く同じ光景とはいきませんでした。

私は「東京物語」の中でも、この浄土寺でのシーンが好きです。

周吉(笠智衆)の妻とみ(東山千栄子)が息を引き取ったあと、

燈篭の傍で、尾道水道に目を向け、ひとり佇む周吉。

その周吉の元へ、次男の嫁である紀子(原節子)がやってくる。

紀子「お義父さま。」

周吉「ああ・・・」

紀子「敬三(周吉の三男)さんがお見えになりました。」

周吉「・・・そうか。・・・ああ、綺麗な夜明けじゃった。今日も暑うなるぞ・・・。」

私は、この周吉の言葉にせつなさを感じてたまりません・・・。

 

周吉が夜明けを見て、思いを馳せていた場所が、今はもう塀で閉ざされていました・・・。

↑↑画面左側の塀が見えるあたりが周吉の佇んでいた場所です。

周吉と同じような目線で、尾道水道の夜明けを見たかったなぁ・・・。

↓↓周吉の次女、京子(香川京子)が勤めていた小学校前の道。

↓↓京子が勤めている小学校へ向かう途中の路地。

 ↓↓ラストシーンの風景

63年前に比べると、大きく景色が変わっていました・・・。

でも、映画からあふれてくる心象風景は、いつまでも変わりません。

浄土寺を離れ、私は福善寺へ向かいました。

その道中、思いもよらない場所で、とある著名人の石像を見かけました。

この石像の御仁は西郷四郎さんです。

あの、姿三四郎のモデルになった御仁です。

尾道は、西郷四郎さんがその生涯を終えた場所だったのです・・・。

柔道で華やかな道を歩んできた御仁が、病に冒され、とても静かなこの場所で逝去されたのだと思うと、

胸に込みあげるものがありました・・・。

そんな私の横を、自転車に乗った学生達が通り過ぎています。

学生のひとりが、見ず知らずの私に向かって「こんにちは!」と元気よく挨拶をして行きました。

驚いた事に、その学生だけではなく、他の学生も「こんにちは!」と私に向けて挨拶をします・・・。

少し気持ちが沈んでいた私でしたが、学生さん達の元気な挨拶に救われた気がします。

西郷四郎さんが生涯を終えた町は、とても素敵な町である事に気持ちが救われたのです。

東京物語」で周吉の妻とみの葬式をあげたのが、こちらの福善寺です。

大林宣彦監督の「転校生」でもロケ地となっています。

その境内から千光寺山の方を見ました。

今朝、あの小高い山を登ったなぁ・・・。

そして、日が暮れる前に、またあの山を登らなければ・・・。

今夜宿泊する場所が、あの山の上にあるからです。

千光寺山ロープウェイが修繕工事のため、運休になっている事が、この旅の大きな誤算でした。

タクシーで宿泊場所へ向かう事も可能なので、タクシーを利用する事も考えましたが、

なんとなく旅の気分が削がれるような気になり、歩いて行く事を決心しました。

日が暮れる前に登らなければ、暗くなると照明の無い道が怖い!(>_<)

少し急ぎ足で登山しました。

そしてようやく尾道城が真近に見える場所まで辿り着きました。

その場所から尾道水道を眺めると、とても綺麗な夕陽を見る事が出来ました。

歩いて来て良かった・・・。

身体はとても疲れているけど、とてもしんどいけど、歩いて来て良かった・・・。

ホテルに到着した私は、部屋の窓から尾道の町を眺めました。

今回利用したホテルは「ビューホテル セイザン」です。

眺めが良いことで評判のホテルだったので、宿泊することに決めたのです。

本当に、期待通りの眺望でした。

黄金色に輝く風景が、今もなお胸に残っています。

 

最後に・・・。

東京物語」の足跡を辿ったこの日、

↓↓このような場所へも訪ねていました。

「おのみち映画資料館」です。

小津安二郎監督と新藤兼人監督を中心に、ゆかりの品物や資料が展示されていました。

実に見応えのある資料館です。

その資料館の入口に、昨年9月に逝去された、往年の名女優 原節子さんの遺影が・・・。

小津安二郎監督がお亡くなりになったのをきっかけに、彼女は引退されました。

当時43歳という若さです。

私の耳に残る彼女の印象深いセリフがあります。

「いいんです、あたし歳をとらない事に決めてますから・・・。」(「東京物語」より)

引退後、彼女が公の場に出ることは殆どありませんでした。

だから、多くの人の記憶の中では、43歳の原節子さんで時が止まっているように思えます。

 

謹んで原節子さんのご冥福をお祈り申し上げます。・・・合掌。