天王寺で映画を観賞した後、私はどこにも寄らず地元へ戻りました。
私の地元である八尾に着いた時、カミさんから一報が・・・。
「麺切れの札が出てる。」と・・・。
もう食べる事は出来ないのかな~・・・。
少し悲しい気持ちなりましたが、とりあえずお店へ向かいました。
カミさんから送られてくるメールでは何とかなりそうな事も書いてある。
とにかく急いでお店へ向かいました。
お店に着くと、やはり麺切れの札が掲げられている・・・万事休すか、そう思った・・・。
ただ、お店の前には8人ほどの行列が出来ている。
その行列の中にカミさんがいました。
カミさんの話によると、現在並んでいる人の注文分は大丈夫だろうとの事。
すでに、お店の女将さんには、あとで私が来る事も話してあるとの事だった。
それから少しして、女将さんが注文を訊きに来てくれました。
そして、その5分後には入店。
店内は多くのお客さんで賑わっていました。
皆様、一忠さんに対して、各々の思いがあるんだろうな・・・。
食べ終わり、お店を出られる方達が「ご苦労様でした。」とか「長い間お疲れさまでした」と、
大将や女将さんに感謝と労いの言葉を掛けられていました。
その言葉に対して笑顔で応える大将と女将さん。
そのおふたりの姿があまりにも清々しく見えて、良い人生をおふたりで歩んで来られたのだと、
私はそう思いました。
私とカミさんはカウンター席に座りました。
目の前では、大将が手際よく仕事されています。
当たり前のようにあったこの光景も、もう見る事が出来なくなる・・・。
それと同時に、今日、この光景を最後に見る事が出来て良かったという思いも・・・。
テーブルの上に置かれている薬味の中から「かつお煮」を小皿にのせ、それをつまみました。
お店に入ってすぐにおしぼりを取り、お水をコップに入れて席に着くことや、
こうして「かつお煮」を食べること・・・そのすべての行いが最後になる・・・。
そして・・・大将の背中が遠くに感じてしまう寂しさ・・・。
老舗のお店が閉店を迎えるというのは、こういう事なんだ・・・。
なんだか、しみじみとなってしまいました・・・。
お店に入ってから15分ほどして、つけ汁が用意されました。
今回、私は「ざるうどん(大)」を注文しました。
本当は「特大」を注文するつもりが、誤って「大」を注文してしまいました・・・。
実はわたくし、一忠さんでは「ざるうどん」をこれまで食べた事が無かったのです。
なので、最後の最後にどうしても食べておきたかったのです。
↓↓「ざるうどん(大)」
見るからに美味しそうな麺。
さっそくいただきました。
ほんのり塩味がして、小麦の風味を引き立てています。
弾力もコシも申し分なしの食感。
そのまま食べても、本当に美味しい麺です。
つけ汁に潜らせると、なお味わい深くなります。
とても美味しかった!!
最後の最後に食べれて心底良かった!!
カミさんから「釜揚うどん(大)」を少し分けてもらいました。
温の麺はモチモチ感が増して、相も変わらず美味しい。
もう、このうどんが二度と食べる事が出来なくなるなんて・・・。
麺も出汁も、心に刻みながら味わいました。
一忠さんは本日、平成28年7月31日をもって閉店されます。
実に44年もの間、大阪府八尾市で、地元の人達に愛され、遠くのうどん好きにも愛され続けながら、
その幕を閉じられます・・・。
大将と女将さん・・・ご夫妻で歩まれたその歴史は、
多くの人の心に、喜びと笑顔を与え続けて来た日々だったと思います。
この町に一忠さんというお店があった事を、誰もが誇りに思い、語り継がれるものと思います。
だから・・・永遠に・・・「釜揚うどん一忠」の名が消えることはありません。